2016/02/08

アレッサ 「そいつは正解だとは言えないな」

アレッサ 「少なくともディアのほうがましだったろうよ。あたしよっかは」
工房主 「そうかな……」
アレッサ 「まあ、今更だ。気にせず休んでなよ」


――4時間前――

アレッサ 「メイ、夕食が5人分しかないぞ。1人分足りない」
メイリン 「メイド長の分がいらないからですよ。聞いてませんか?」
アレッサ 「何を」
メイリン 「今日は市子さんのお誕生日らしくて、二人で食事に行くので夕食はいらないと朝礼でおっしゃっていたじゃないですか」
アレッサ 「……ああ、そういやそうだったな」
メイリン 「さ、いただきましょう」


 


アレッサ 「よし、食器の片付けも済んだし、帰るか」
ローナ 「お疲れ様です」
アレッサ 「おつー。そうだローナ、帰りにちょっと飲んでいかないか?」
ローナ 「すみません、先約がありまして……」
アレッサ 「そっか。じゃあまた今度な」


アレッサ 「帰宅ぅ~っと。バイク通勤も寒くなってきたなァ……車買っちゃうかな」
アレッサ 「……置くトコ無いか。このアパートにゃ駐車場無いし……」
大家 「悪かったね、狭いアパートで」
アレッサ 「ぅわ! 背後に立たないでくださいよ大家さん、もうちょっとで撃つところでしたよ」
大家 「はん、あんたみたいなヒヨっ子の豆鉄砲に当たるようなヤワな鍛えかたはしてないよ」
アレッサ 「そ、そうですね。あ、それと、狭いなんてとんでもない。バイク置かせてもらってるだけありがたいッス」
大家 「そうかい。どうでもいいけど、そのすぐに抜く癖、やめた方がいいよ。ここは日本だ」
アレッサ 「イエス、マム」


アレッサ 「まさか大家さんが後ろにいたとは……気配がなかったけどあの人忍者か何かか?」
アレッサ 「まあいいや。エアガン整備してシャワー浴びてビール飲んで寝よ……」


アレッサ 「ふー、サッパリした。冷蔵庫のビールは冷えてるかなーっと……」
アレッサ 「……ん? スマホにメール着信? 誰だ」
アレッサ 「マスターから? 珍しい……」

工房主 『助けて』

アレッサ 「おいおい、なんだってんだ一体……。電話してみるか」
アレッサ 「…………。ダメだ、出ない。何があったんだ」
アレッサ 「ともかく工房に行ってみるしかないな」


アレッサ 「工房の庭に侵入者の形跡は無し、建物にも異状無しと。事件じゃなさそうだナ」
アレッサ 「玄関の鍵は……閉まってるな。裏口はどうだっけな」
アレッサ 「やっぱり閉まってるか。ま、玄関よっか開けやすいからいいか。ツール持ってきて正解だった」
アレッサ 「……よし開いた。練習しといてよかった。何が役立つかわからんもんだね」
アレッサ 「おーいマスター、さっきのメールは……って。なんで廊下の真ん中で寝てんだ?」
工房主 「どうにも、頭が痛いし寒いし身体がギシギシ鳴るし周囲が回るし、体調がおかしいんだよ……」
アレッサ 「で? トイレにでも行った帰りに力尽きたか?」
工房主 「その通り……」
アレッサ 「やれやれだ。……オーライ、部屋まで連れてってやんよ」


アレッサ 「あたしゃ医者じゃないからわかんないけど、多分風邪だ。この頃ちゃんと寝てないだろ?」
工房主 「ああ、うん……今日が締切の原稿があって、数日間夜遅かったから……」
アレッサ 「アンタはキッチリ8時間寝ないとすぐに風邪引くからナ。身体鍛えなよ」
工房主 「面目ない」
アレッサ 「いいさ。今はゆっくり休めばいい。薬は飲んだか?」
工房主 「いや、キッチンに取りに行ったんだけど、どこにしまってあるのかわからなくて」
アレッサ 「家事を全部奥さんにまかせっきりで家の事が全然わからない定年退職後の旦那みたいなこと言ってんなよ……。待ってな、探してきてやるから」
工房主 「前に置いていた場所にはなかったんだよ……置き場所を変えたのかもしれない」
アレッサ 「ヤー、マスター」


アレッサ 「メイが確かこの辺にしまってたはず……あった、薬箱だ。けど風邪薬が切れてるな……」
アレッサ 「しょうがない、買ってくるか。ドラッグストアがまだ開いてりゃいいけどな」


アレッサ 「風邪薬とポ○リ、あとウ○ダーインゼリー買ってきた」
工房主 「すまないねぇ、いつも迷惑ばかりかけて……」
アレッサ 「それは言わない約束だよ、ク○野郎」
工房主 「ひでぇ……」
アレッサ 「ボケをかませるくらいだから、少しはましになったのかね」
工房主 「全然。でもこういうシチュでネタを発揮できずしてなにが大阪人ですか」
アレッサ 「大阪人に対する偏見が酷くなるような発言はやめれ」


アレッサ 「それにしても、なんであたしにメールを寄越した?」
工房主 「ん?」
アレッサ 「看病ならメイド長に頼めばすっ飛んでくるだろうに。アンタもそのほうがよかったろ」
工房主 「ヴィアーチェは市子さんと食事に行ってるからね……。邪魔しちゃいけないと思った」
アレッサ 「それじゃあたしを呼ぶ理由には足りない。そいつは正解とは言えないな」
工房主 「どうして?」
アレッサ 「看病するのに適任じゃないからさ。少なくともディアのほうがましだったろうよ。あたしよっかは」
工房主 「そうかな……」
アレッサ 「そうだよ。どうしてディアやメイ、ローナを呼ばなかった?」
工房主 「……アレッサが一番早く駆けつけてくれるから、だよ。バイクだし」
アレッサ 「早く来たって看病に役立たなかったら無意味だろ」
工房主 「そんなことはない。ちゃんと風邪薬を買って来てくれたし、飲ませてくれた」
アレッサ 「……まあ、今更だ。気にせず休んでなよ」
工房主 「そうする。アレッサも、もう大丈夫だから帰っていいよ。ごめんね、急に呼び出して」
アレッサ 「気にすんな」


工房主 「……のど乾いたな……。今何時だ……?」
アレッサ 「深夜2時。待ってな、ポカ○を持ってきてやるから」
工房主 「アレッサ? どうしているんだ、帰らなかったの?」
アレッサ 「弱ってるアンタを放って帰るほど非情じゃないつもりなんでね」
工房主 「だからって、工房に泊まったら規則違反でヴィアーチェに怒られるじゃないか」
アレッサ 「関係ねェよ。あたしのご主人様が、他のメイドじゃなくあたしに助けを求めて来たんだ。それに応えるためなら、メイド長の説教くらいいくらでも聞いてやるさ」
工房主 「……ごめん。ありがとう。明日、私からヴィアーチェにはきちんと説明しておくから」
アレッサ 「頼むよ、マスター。できることならあの説教は受けたくないし」
工房主 「了解」


アレッサ 「それはそうと、少しは熱が引いたか?」
工房主 「わからない。まだ頭はぼーっとしてるけど……」
アレッサ 「熱が出てるときは汗をかくのがいいんだってな。軽い運動するとかさ」
工房主 「…………」
アレッサ 「なんだよ、急に黙り込んで。……あー、お約束の展開を想像したか?」
工房主 「いや、別に」
アレッサ 「深夜、男女二人きり、ベッド、熱に浮かされてる……まあ、妄想がちなアンタならそうなるわな」
工房主 「うるさいよ!」
アレッサ 「いいよ。あたしは、そうなっても」
工房主 「え……」
アレッサ 「熱に浮かされてあたしを襲うんでしょ。エロ同人みたいに! わざわざメイド服に着替えさせられて、着たままされちゃうんだわ。エロ同人みたいにっ!」
工房主 「それが言いたかっただけちゃうんかと。というか襲っても返り討ちにされるのが見え見えなんで無理です」
アレッサ 「はっはっは。あたしゃメイ以外に身体を許すつもりはないかんな。必然的にそうなる」
工房主 「だったらつまらない冗談はやめて。心臓に悪い」
アレッサ 「そいつは拙い。ともかく水分補給して寝て、体調を回復させてくれ」
工房主 「そうする。明日になってヴィアーチェに心配かけたくないしね」
アレッサ 「ああ、全くだ。今晩はついててやるからさっさと寝れ」


アレッサ 「寝た、か」
アレッサ 「さて……さっきはああ言ったが、メイド長にどう説明したもんかねぇ……」


アレッサ 「こっちの頭が痛くなりそうだ」



          完

 
創作小説 | Comments(0)
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