2016/06/25

レポート用紙 砂糖 憧れ

 物書きとしてのレベルアップには「三題噺」を書くのがいいと聞き、「三題噺お題ジェネレータ」なるものを見つけたので試してみることにしました。
 三題噺というのはランダムに選んだ3つのお題を盛り込んだ小説で、大抵は掌編くらいの長さで書かれます。野村美月「文学少女シリーズ」の第1巻にもちらっと描かれているアレです。

 というわけで、書いてみました。
 お題は「レポート用紙」「砂糖」「憧れ」です。

 


     『デッドライン』


 案外、静かでもないものだ。
 そんなことを思いながら、手にしていたペンを置いた。
 真っ暗な部屋には、机に備え付けたLEDライトスタンドの白い光と、全曲再生を終えて次の操作を待つ携帯音楽プレイヤーの薄ぼんやりとしたディスプレイ光しかない。窓の外も、どこか遠い何かの明かりがちらほら見えるだけだ。
 私はプレイヤーにもう一周させるかどうかを少し迷い、結局イヤホンを外した。静寂の中で作業をするのが苦手な私にしては、自分でも意外な選択だった。
 時計を見ると、もう午前一時過ぎだった。思った以上に時間が過ぎていたらしい。
「んー……」
 凝り固まった身体の筋肉をほぐすように大きく伸びをする。そしてあらゆる負の感情を乗せたような大きく深い深いため息をついた。
 静まり返った狭いオフィスには深夜ゆえ他に誰もいない。私は一人寂しく、音楽をお共にひたすらレポート用紙に文字を埋める作業をしている。パソコン全盛のこの時代、何故紙にペンで大量の文字を綴らなければいけないのか。
 自分の手で、ペンを使って、紙に書かないと覚えないから。
 そう年老いた上司に言われた。今時そんなことを言われても、と思う。
 しかし、実際自分でパソコンを使って作成した(文献の引用にコピペを連発した)資料の内容を一部覚えておらず、結果としてミスをしてしまった。ぐうの音も出ないほどの失態だった。
 そこで始末書と改善点を手書きで提出することになり、そのデッドラインが明日……いや、今日の午前九時なのだ。
「ふう……」
 無意識にため息が零れる。
 ……ダメだ。このままでは気力が落ちて睡魔に負けてしまう。まだまだ作業は道半ば、ここでやる気を失っては到底間に合わないだろう。休憩をはさんでリフレッシュしよう。
 席を立ち、給湯室の電気ケトルのスイッチを入れる。その間にお気に入りのマグカップにインスタントコーヒーをいつもより多めに入れて、さらに砂糖も普段の二倍入れた。眠気覚ましに濃いコーヒーを飲みたいが、いかんせん私は甘いコーヒーしか飲めない。こんな深夜に糖分をたっぷり摂って太りはしないだろうか……というのは今考えることではない。増えた体重は時間をかけて落とせばいいが、このレポートはそれだけの時間の余裕が無い。では優先させるべきはどちらか、改めて言う必要もないだろう。
 学生の頃から憧れていたこの業界に、ようやっと入ることができたのだ。自分の心がけ次第で修正できるミスなどに足を掬われて去るようなことはしたくない。
 よし、やるぞ。
 私のやる気に呼応したかのように沸いた熱いお湯をマグカップに注ぎ、香り高いコーヒーを少しずつ口に含む。
 熱い。苦い。甘い。そんな混沌とした液体が喉を降りていく。
 深夜の誰もいないオフィスに、自分の吐息がこだました。
 しかしそれは、すぐに掻き消えた。
 こんなに遅い時間なのに、オフィスの外は人がちらほらと行き交い、車が列をなして走って行く。
 音楽を聴いていたときは気づかなかった、深夜の喧騒。昼間のそれとは比較にならないほどささやかではあるが、深夜だというだけで妙に大きくけたたましく聞こえる。このノイズを音楽の代わりにペンを走らせるのも悪くないだろう。
 案外、夜というのは静かでもないものだ。



          終





 あー……。なんだろう、キレイなオチが無いなー……。
 難しいもんだ、三題噺ってのは……(´・ω・`)

 まぁ、繰り返しやってれば慣れてくるでしょ。とか。

 
三題噺の練習 | Comments(0)
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