2011/08/24

全開の窓を閉めるために

 夕刻の茜を覆うように鉛色の雲が頭上にせり出し、風に湿気が混じる。
 一雨来るか?
 そう思ったとき、地面に一つ、雨粒が染みを作った。
 それは瞬く間に増え、滝のような雨が降り始めた。
 …そういえば、車の窓を開けたままではなかったか?
 そのことに思い当たり、私は玄関を飛び出した。
 激しいにわか雨の中を、駐車場に向かって疾走する。
 マイカーの開けっ放しの窓を閉めるために。
 急げ。
 急げ。
 運転席が水浸しになる前に、窓を閉めるんだ。
 走れ。
 走れ。


 そうしてマイカーにたどり着いたそこで、私は見た。
 そして、呟く。

「……窓、閉まってるやん……」

 不可解な事実に、呆然と立ち尽くす。
 雨はそんな私の髪を、服を、容赦なく濡らしている――



 …閉めた覚えがないんだけど、なんだろう、これ…。

 
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