2012/03/05

掌編小説『用心する男』

 最近物書きしてないのでたまには。


 …と思いましたが、予想以上に文章を書く技術が衰えているらしく、上手くいきません。
 誰か助けて(ry


 


 とにかく彼は用心深かった。
 何をするにも、必ず自分が納得するまでチェックし、様子を見、確かめてから行動を起こす。持ち物はすべて金庫に保管し、盗まれないようにしている。その徹底ぶりは周囲の人間からは病的だと揶揄されるほどだが、彼はそのスタイルを変えることはなかった。
 しかし、ある老人はそんな彼の行動を大変評価していた。自身の所有する「あるもの」を預けるところを探していたが、用心に用心を重ねても足りないほど大事なものなので、信頼できる場所に頼みたかったのだった。彼なら間違いなく保管してくれるだろうと思った。

 ある日、老人は彼に会うため、彼の家を訪ねた。玄関の呼び鈴を押すと、誰何する男の声が返ってきたので、老人は自身の名前と用件を告げた。すると彼は身分証明書の提出を求め、それを精査するので後日また来てくれと答えた。
 見ず知らずの者から依頼されるのは不安もあるだろうと予想していた老人は、特に気を悪くせずその言葉に従うことを決めた。
「後日というのはどのくらいかね?」
 老人が尋ねると、彼は少し間を開けるように押し黙り、一週間後の日付を口にした。
「わかった。一週間後にまた来る」
 噂通りの男だ、と老人は感心しつつ、用意してきた身分証明書やその他の書類を玄関先に置いて、この日は帰宅した。

 一週間後、老人は再び彼の家を訪ねた。
 呼び鈴を押すと以前と同じように誰何されたので、名前と用件を答えた。
「本当に先週やってきた人ですか?」
 と、彼は言った。老人は間違いない、本人だと答え、呼び鈴の横に付いているカメラの前に身分証を出した。
「まさかこの身分証も一週間かけて調べるとは言いますまいな?」
「そうさせていただかなくてはなりません」
「なんと。それではいつまで経っても面会できないではないか。どういうことだね」
 憤慨する老人に、彼は少し口ごもったが、やがてぽつりぽつりと話し始めた。
「私は大事なものはすべて金庫に保管するようにしています」
「それは悪いことじゃない。それがどうした」
「先週置いて行かれた書類もすぐに金庫に入れましたが、保管した金庫の鍵をそのまま持ち歩くのは危険なので、違う金庫に鍵を入れています」
「ふむ。用心のためなら仕方ない」
「鍵を入れた金庫の鍵も、用心のために違う金庫に入れて、その鍵をまた違う金庫に……」
「用心深くて良いではないか」
「そして気づけば、書類をどの金庫に入れて、どの金庫にどの鍵が入っているのかがわからなくなってしまいまして、未だあの書類を確認できていないのです」
「用心深い君のことだ、どの金庫に何を入れたかくらいメモを取っているだろう。それを見ればわかるじゃないか」
 老人が返すと、彼は答えた。
「そのメモも金庫に入れておりまして……」


                終



     ・     ・     ・

 星新一っぽい感じで書いてみたけれど、ありがちなネタだなぁと思います。

 
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