2013/01/31

急に思いついた設定をSSっぽく語ってみたりとか

みなとも 「これからは名前で呼ぶのをやめようと思う」
アレッサ 「……なんだよ藪から棒に。何の話?」
みなとも 「普通の会社で、社員全員がファーストネームで呼び合うってことはかなり少ないと思うんだ。だからウチでも普通にしようかと」
ローナ 「この工房が普通の会社に見えるのでしたら、一度眼科か脳神経外科に診察していただいた方が良いと思います」
みなとも 「心配ないよローナ。工房が相当変なところだってのは自覚してるし」
ヴィアーチェ 「悲しくなるのでそんな自覚はしないでください」
みなとも 「ともかく、これからは各人名字で呼ぶようにしようと思う」

 


アレッサ 「マスター、質問いいか?」
みなとも 「どうぞ」
アレッサ 「知ってると思うけど、あたしの名前は偽名で名字が無い。どうすんだ?」
みなとも 「…………戸籍はどうなってんのさ。日本国籍持ってるんだよね?」
アレッサ 「一応、あたしを育ててくれた日系人NGO職員のファミリーネームになってるはずだけど、いくつも名前を使ってた時期があるからあたしはそれを覚えてないわけで。ま、それもぶっちゃけ偽造だけどさ」
みなとも 「えーっと……ローナさん、ちょっと調べていただけませんかね?」
ローナ 「限定ミルフィーユでなら」
みなとも 「うっ……そ、それでよろしく(1260円か……高いよ……)」
ローナ 「了解しました」
みなとも 「気を取り直して……ヴィアーチェは八重崎でいいんだよね」
ヴィアーチェ 「はい。シルヴァライネンはここではあまり使いません」
みなとも 「メイリンは……『朱』だっけ? お父さんが中国で」
メイリン 「いえ、今は違います。両親が離婚してまして、今は母の名字なので『安芸(あき)』です。『安芸美鈴(あき みすず)』が私の名前ですよ」
みなとも 「それは……大変なことになってたんだね。知らなかった」
クローディア 「メイド隊は全員知っているのだが」
みなとも 「私だけハブられてたの!?」
ヴィアーチェ 「お話ししたはずなのですけれど……」
みなとも 「いや、それはないね。愛するヴィアーチェが話してくれたことを私が覚えてないはずがない。ましてやメイド隊のことになると余計にだ」
ヴィアーチェ 「さらっと恥ずかしいことを言わないでください」
アレッサ 「じゃあローナの名字、答えてみなよ」
みなとも 「ハーシェル。そうだろ?」
ローナ 「残念ですが、それは本名ではありません」
アレッサ 「え、そうなの?」
みなとも 「なんで自信満々に出題した本人が驚いてるんだよ……」
クローディア 「笠森ロゼンティーナ。笠森は養子に貰われた母方の祖父母の名字で、『ローナ』は本名の略称だ」
ローナ 「……どうしてご存知なのです? メイド隊はもちろんみなともさんにも話したことはありませんのに」
クローディア 「いつだったか、『りっちゃん』と呼ばれていたローナの親友という人から聞いた」
ローナ 「……そうですか。あのりっちゃんが教えたのですか」
クローディア 「秘密にしておいた方がよかったのか? そうとは言われていなかったのだが」
ローナ 「構いません。りっちゃんが信用した人なら大丈夫ですし。私の本名を知ってしまっても、別に大したことはありません。うふふふ」
みなとも 「怖ッ! 他言無用でないとどうなるかわからないな……」
アレッサ 「で、ディアはなんだっけ? 聞いたことあったっけか」
クローディア 「名乗っていない。そもそも『クローディア』というのも本来の名前ではないからな」
みなとも 「と言うと?」
クローディア 「この『クローディア』とは私の家系に受け継がれている武術を修めた者のみが名乗ることを許される称号のようなもので、男は『クローディオ』、女は『クローディア』と呼ばれる。もちろんその呼称を強制されるわけではないが、私は本名よりもこちらのほうが外見に合っていると思うので称号を使っている」
アレッサ 「……ということは、ディアんちの武術を会得した人がいっぱいいたら、みんな同じ名前になっちゃうのか。変なしきたりだな」
クローディア 「基本的には血縁者の数人にしか習得させないという決まりはあるが、親戚が集まればそういうことも有り得る。受け継がれる伝統とはそういうものだ」
みなとも 「で、本名は?」
クローディア 「五十鈴川紗織(いすずがわ さおり)という」
アレッサ 「!?」
メイリン 「!?」
みなとも 「その外見で!?」
クローディア 「半分ドイツの血が入った日本人の母と日本人の父の間に生まれた子だから、そうなっても仕方ないと思うがな。私はこの名を気に入っている」
ローナ 「外見以外は間違いなく古き良き日本人女性ですからね。名前に相応しい人ですよ」
クローディア 「む……ローナに褒められるとは意外だ」
ローナ 「他意はありません。素直にお受け取りください」
アレッサ 「ところでローナ、あたしの名字、わかった?」
ローナ 「ええ。照合してみたところ、米系日本人『本田リナ』になっていますね」
アレッサ 「ああ、そうそう。とーさんがそんな名字だった」
みなとも 「というかアレッサという名前ですらないんだが」
アレッサ 「言ったろ、全部嘘だって。傭兵になったときに全部消去されたんだから、あたしにゃ何もないんだよ。世界中どこでも通用する、正式に発行された偽造身分証明書があるだけさ」

南村 「と、みんなの名字が判明したところで、これからはそれで呼び合うことにしよう」
八重崎 「本当にやるんですか……?」
南村 「そうだよ、八重崎さん」
八重崎 「……すごく他人行儀な気がして落ち着きません……」
本田 「気にするほどでもないですよ、メイド長」
安芸 「そうですよメイド長」
笠森 「すぐに慣れると思いますよ、メイド長」
五十鈴川 「私もそう思う。メイド長」
南村 「なんでみんな八重崎さんを役職で呼ぶのかな。かな?」
本田 「慣れないからに決まってるだろ、南村社長」
南村 「うっ……社長とか言われると背筋がむず痒くなる……」
安芸 「でも、南村さんを社長って呼ぶのは正しいんですか?」
笠森 「一応会社ですから、それでいいのではないかと思いますけれど。違和感がありますか」
安芸 「うーん……少しだけ。笠森さんは無いんですか」
笠森 「特には。五十鈴川さんは?」
五十鈴川 「私も無いな。気にし過ぎだろう、安芸さん」
安芸 「……クロ……じゃなくて本田さんに『さんづけ』で呼ばれるとくすぐったい……」
本田 「おいおい、本田はあたしの名字だよ。こっちは五十鈴川」
安芸 「あ、そうでした。覚えるのが大変ですよぅ……」
八重崎 「南村さん、本当にこれを続けるのですか? 安芸さんが混乱していますが」
南村 「もちろんだよヴィアーチェ……じゃなくて八重崎さん」
本田 「言いだしっぺが間違えてどうする……」
笠森 「問題は、私たちではなくお客様がとても混乱するというところでしょうね。さきほど南村さんが『これからはそれで呼び合うことにしよう』とおっしゃってからは名字で表記されるようになりましたが、誰が誰か、わからなくなる方がいらっしゃると思います」
五十鈴川 「我々だけが不便なのはともかく、客人に不具合があるのは良くないと思うが」
本田 「あたしはまぁ、どっちでもいいよ。前のほうが気楽だとは思うけど」
安芸 「私は前のままがいいです」
南村 「…………」

みなとも 「わかった。この話はなかったことにするよ」
アレッサ 「その方がいい。メイド長も反対してることだし、アンタから名前で呼ばれないのは嫌だって顔してたし」
ヴィアーチェ 「そ、そそそそんな顔してません! 私はただ不便だからと……!」
アレッサ 「ま、そういうこった。つまんねーことに時間を使ったな」
メイリン 「……いえ、無駄な時間じゃなかったと思います」
クローディア 「どういうことだ、メイリン」
メイリン 「いえ、さっき思い出したんですけど……二か月くらい前に、五十鈴川紗織さん宛てに荷物が届いていたんですけど、『そんなヤツはいねーよ』とアレッサさんが配達員に荷物を叩き返していた気がするんです」
アレッサ 「あー、あったな。そんなこと。まさかディアのことだとは思わなくってさ」
クローディア 「何?」
メイリン 「その時の荷物って、なんだったんでしょう? 大事なものだったんですか?」
クローディア 「私のものではない。アレッサに頼まれて出した『月刊銃火器ラブラブ』の懸賞だと推測するが」
アレッサ 「なん……だと……?」
クローディア 「先月号の当選者に私の名前が載っているが、なかなか届かないのでおかしいと思っていた」
アレッサ 「そ、それで、何が当選してた……?」
クローディア 「うむ。有名ガンショップのフルカスタムSVD(電動ガン)だったと記憶している」
アレッサ 「ぅおい!? 当選者一名の特等じゃねーか! なんで本名で懸賞に応募したんだよ!? しかも受け取りを工房の住所にして」
クローディア 「書類的な名前は普段から五十鈴川を名乗っているし、自宅にすると運ぶのに手間がかかると思った。ここならすぐに受け渡しができる」
アレッサ 「だったらあたしに一言くらい声掛けとくのが普通だろ!?」
クローディア 「差出人を見れば中身はわかる。気づかなかったのは拙かったな。それにお前の一存で受け取り拒否したのがそもそもの原因だろう。なぜ全員に心当たりを問わなかった?」
アレッサ 「うわあああああああああああ……」
みなとも 「……アレッサが真っ白に燃え尽きてる……。よほどショックだったんだナ」
メイリン 「アレッサさん、五十鈴川を『ごじゅうすずかわ』って読んでましたよ」
みなとも 「日本語の読み書きが苦手だからそれは仕方ないよ、メイリン……」
クローディア 「……これは私が悪いのか?」
みなとも 「非が無いわけじゃないけど、微々たるものだと思うよ」
クローディア 「そうか」
ローナ 「なるほど、確かに無駄な時間じゃありませんでしたね。今後、こういうことが起こらないよう、全員の本名を知る機会があったのは幸いでした」
アレッサ 「何が幸いだこの野郎。あたしの悲しみをどうしてくれる!?」
ローナ 「そうですね……。メイリンさん、ちょっと慰めてあげてください」
メイリン 「はい」
アレッサ 「あたしがメイの頭なでなでくらいで機嫌を取り戻すとでも……!」
メイリン (なでなで)
アレッサ 「……もう、いいや……」
みなとも 「こうかはばつぐんだ!」
ヴィアーチェ 「はい、みなさん。お仕事に戻ってください。休憩時間は終了ですよ」


      終
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