2014/11/30

工房主 「まさかドアが開かなくなるなんて」

工房主 「閉じ込められちゃったんだけど……どうしよう……?」
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「とにかくどうにかして脱出しないと」
ヴィアーチェ 「それはそうですが、この地下シューティングレンジの壁やドアは完全防音仕様で頑丈ですから、ちょっとやそっとでは出られませんよ。地下なので窓もありませんし」
工房主 「だよねぇ……」
ヴィアーチェ 「……困りましたね……」


 


 11/29(土)

アレッサ 「あー、そうだ。メイド長、シューティングレンジの入り口ドアのことなんですけど」
ヴィアーチェ 「はい」
アレッサ 「どうも建て付けが悪くなってるみたいで、たまに内側から開かなくなるんですよ」
クローディア 「あれはお前がドアを蹴飛ばしたから……」
アレッサ 「黙れディア。言わなくていい」
ヴィアーチェ 「…………」
アレッサ 「そ、それでですね、できれば修理をと思いまして。結構大事な物もありますし、迅速に」
工房主 「わかった。業者に手配しておくよ」
アレッサ 「サンキュ、マスター」
工房主 「修理代はアレッサの給料から引いとく」
アレッサ 「……アンタは鬼や……」


ヴィアーチェ 「業者に連絡しましたが、早くても週明けの火曜になるそうです」
工房主 「そっか……。自分で直せないかな」
ヴィアーチェ 「どうでしょう? どういう風に不具合があるのかわかりませんので」
工房主 「明日は日曜だし、暇だから調べてみよう」


 11/30(日)

工房主 「……なるほど、内側からだとドアノブの中のリンクが上手く動かないことがあるんだな……」
工房主 「あ、これか。外れかかってる部品を元に戻せば……」
工房主 「よし、直ったぞ」


ヴィアーチェ 「修理できたんですか?」
工房主 「まあね。部品が一つ外れかけていたのを戻したらこの通り」
 がちゃ、ばたん。がちゃ、ばたん。
ヴィアーチェ 「大丈夫そうですね。けれど、一応新品に交換しておく方がいいのではないでしょうか」
工房主 「そうだね。外れるはずの無い部品が外れかかったってことは、また不具合が出る可能性も――」
 ばきんっ!
工房主 「…………」
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「ドア……開かなくなっちゃった……」
ヴィアーチェ 「どうするんですか……」
工房主 「どうしよう……」


工房主 「そうだ、携帯電話だ。ヴィアーチェ、持ってるよね?」
ヴィアーチェ 「持っていますが、ここは地下なので電波が届かないようです」
工房主 「じゃあ内線電話で」
ヴィアーチェ 「日曜日ですので工房に誰もいませんが」
工房主 「Oh……」
ヴィアーチェ 「大丈夫です。いつも通りお昼ごはんを食べにアレッサさんが来るはずですから、そのとき私たちがいなければ探しにくるかもしれません」
工房主 「残念だがそれはダメだ……」
ヴィアーチェ 「どうしてですか?」
工房主 「昨日アレッサが言ってた。『日曜はサバゲ大会があるから和歌山に行く』と」
ヴィアーチェ 「そんな……じゃあ誰も助けに来てくれないんですか」
工房主 「遺憾ながらそういうことになるね。……私たちでどうにかするしかないんだ」
ヴィアーチェ 「でもどうやって?」
工房主 「わからない。とにかく火器保管庫になにか使えそうなものが無いか、探してみよう」
ヴィアーチェ 「わかりました」
工房主 「しかし脱出ゲームをリアルで体験するなんてなぁ……」
ヴィアーチェ 「これは必ず脱出できるように仕組まれたゲームではありませんよ」
工房主 「わかってる。……それにしてもヴィアーチェ、随分落ち着いてるね」
ヴィアーチェ 「慌てたところで状況は良くなりませんし……映画のヒロインのようにもっと取り乱して見せた方が可愛げがあるでしょうか?」
工房主 「確かに取り乱したヴィアーチェをなだめて頼れる自分を演出したいところだけど、どこまで行っても私はヘタレだってのはすでによく知られているからね。そんな無駄なことをするよりヴィアーチェが冷静でいてくれる方が助かる」
ヴィアーチェ 「そうですか」
工房主 「……でもまぁ、こんな頼りない雇い主でも頼ってくれていいんだよ。ウエルカム」
ヴィアーチェ 「ありがとうございます」


工房主 「ドアを力ずくで開けそうなのは、このバールと軍用折り畳みスコップくらいか」
ヴィアーチェ 「現実的なものは、そうですね」
工房主 「アレッサの私物の『C4プラスチック爆弾』や『RPG-7』が本物だったらドアは吹っ飛ばせるけど、密閉室内で使うものじゃないからなぁ……。ま、それ以前に使い方を知らないんだけどさ」
ヴィアーチェ 「それよりなぜこんなものがここにあるのかが不可思議でなりません」
工房主 「まぁ、アレッサのやることだから」


ヴィアーチェ 「やはりドアは防音仕様ですので、分厚くて桟との隙間もほとんどありませんね」
工房主 「内側からじゃバールを突っ込む隙間も無いか……。ロック機構を壊せればいいけど無理そうだ」
ヴィアーチェ 「誰かが気付くまで待つしかないんですね……」
工房主 「そうだね……。いつになるんだろう」
ヴィアーチェ 「水や食べ物は保管庫に置いてあったものがありますから、飢える心配はありませんけれど」
工房主 「アレッサの私物なんだろうけど、非常時だから接収しよう。三日くらいは耐えられる量があるよ」
ヴィアーチェ 「明日の朝になればみなさん出勤してきますから、それまで頑張れば」
工房主 「あと二十一時間か……長いなぁ……」
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「不安?」
ヴィアーチェ 「いいえ。……と強がるくらいの余裕はあります」
工房主 「そっか。ヴィアーチェがそうなら心強いよ。私一人だったら泣いちゃうかもね」
ヴィアーチェ 「多分、私もです」
工房主 「ぬぅ……泣いてるヴィアーチェか……。見てみたい」
ヴィアーチェ 「本気ですか?」
工房主 「いいや。全然」
ヴィアーチェ 「……こんなときに冗談はおやめください」


工房主 「……うむぅ……」
ヴィアーチェ 「? どうしました?」
工房主 「いや、その……トイレ行きたい」
ヴィアーチェ 「あ、そ……そう、ですね……どうしましょう……」
工房主 「火器保管庫にあるアレッサの私物の中に簡易トイレセットがあったし、それを使おうと思う」
ヴィアーチェ 「そんなものがあるんですか?(よかった……助かりました)」
工房主 「テントもあるし、それをレンジの奥に組み立てて、その中で使おう。そうすりゃ見えなくて済みそうだ」
ヴィアーチェ 「わかりました。組み立てを手伝います」


工房主 「……レーションって案外不味いんだナ……」
ヴィアーチェ 「保存性と栄養価に特化したものですし……仕方ありません」
工房主 「自衛隊のレーションは美味しいらしいけど、これはどこ製なんだろ?」
ヴィアーチェ 「食べ物の好みは国によって違いますから、こういうものなんですよ、きっと」
工房主 「あーあ、閉じ込められてなきゃ、今頃ヴィアーチェのごはんを食べてるんだろうな……」
ヴィアーチェ 「ここを出られたら、主さんのお好きなものを作ります」
工房主 「ありがとう。頑張る」


工房主 「さっき思い出したんだけど」
ヴィアーチェ 「はい」
工房主 「この部屋の電源って、タイマーがあったよね」
ヴィアーチェ 「はい。アレッサさんが空調や照明をよく消し忘れるので、一定時間で止まるようになっています」
工房主 「タイマー設定は?」
ヴィアーチェ 「設定を変えていなければ五時間です。止まる十分前になると、ドアの上の回転灯が回ります」
工房主 「じゃあ今、回転灯が点いてるから十分前なのか」
ヴィアーチェ 「そうですね」
工房主 「明かりが消えたら、窓の無いこの部屋は真っ暗になるね」
ヴィアーチェ 「大丈夫です。タイマー延長ボタンを押せば復帰しますよ」
工房主 「そうなんだけど。そのボタンって、部屋の外じゃなかったっけ? 部屋に入らず階段から確認しやすいようにって通路に設置してた気がするんだけど」
ヴィアーチェ 「あっ…………」
工房主 「…………」
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「メシ食ってる場合じゃねぇッ!」
ヴィアーチェ 「今のうちに明かりになるものを探しておきましょう」


工房主 「なんとか明かりが消える前に、銃に取り付けるフラッシュライトを発見できてよかったよ」
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「ヴィアーチェ大丈夫? 具合悪い?」
ヴィアーチェ 「あ、いえ、大丈夫です。それよりライトは無駄に点けないほうが……」
工房主 「ああそうか。フラッシュライトは明るいけど電力消費が大きいんだったな」
ヴィアーチェ 「手回しダイナモ付きのLEDランタンを使いましょう。光量はありませんが持続時間が長いのでこちらを点けておきます。これでも手元くらいは見えるでしょう」
工房主 「用意万端、か。アレッサの装備品にはいろんなものが入ってるな……」
ヴィアーチェ 「アレッサさんが私物をこの部屋に持ち込んでいて助かりましたね」
工房主 「そのアレッサのせいで閉じ込められたり散々な目に遭ってるんだけどね……」
ヴィアーチェ 「……そうでした」


ヴィアーチェ 「あの、主さん。フラッシュライトを貸していただけませんか?」
工房主 「どうして?」
ヴィアーチェ 「その……少し……」
工房主 「?」
ヴィアーチェ 「奥へ、行こうと思うのですが……」
工房主 「??」
ヴィアーチェ 「ええと、その……お花を摘みに……」
工房主 「! ごめん、気づかなくて」
ヴィアーチェ 「いえ……」


ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「…………」
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「だ、大丈夫だよ。ちゃんと耳を塞いでたから」
ヴィアーチェ 「…………そういうことは言わなくていいです」
工房主 「ごめんなさい」


工房主 「暖房も止まってるんだっけ……寒くなってきたな」
ヴィアーチェ 「一枚だけ毛布があります。使いますか?」
工房主 「いや、それはヴィアーチェが使って。私は寒いのに慣れてるから」
ヴィアーチェ 「いえ、主さんがお使いください。私は大丈夫です」
工房主 「……押し問答だな。じゃあ一緒に使うというのはどうだろう。非常時だし」
ヴィアーチェ 「それは……」
工房主 「…………」
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「…………」
ヴィアーチェ 「……わかりました」
工房主 「ぅえっ!?」
ヴィアーチェ 「どうして驚くのですか。ご自分で提案なさっておいて」
工房主 「いや、その。急にうんと言われたので」
ヴィアーチェ 「今は非常時なのです。仕方ありません」
工房主 「……じゃあ、失礼します」
ヴィアーチェ 「ただし、変な事はしないでくださいね」
工房主 「し、しませんって……多分」
ヴィアーチェ 「……信用していますから」
工房主 (……そんなこと言われたらジェントゥルミェンとして何もできないじゃないか……)
工房主 (まぁ、しないけど。ヴィアーチェに嫌われたくないもんな)


工房主 「この毛布、あんまり温かくないね」
ヴィアーチェ 「隙間があるからです。そこから熱が逃げているんですよ」
工房主 「もう少し毛布が大きければ隙間を塞げるのに……」
ヴィアーチェ 「…………。主さん、もう少しお互いの身体を近づければいいと思います」
工房主 「それはわかってるけど。密着することになるよ?」
ヴィアーチェ 「私は別に気にしません。もう少しこちらに寄ってください」
工房主 「う、うん」
工房主 (……少しは意識してほしいんだけどな……)


工房主 (夜の八時過ぎか。もうちょっと経ってる気がしたけど、暗さで時間感覚がおかしくなってるんだな)
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 (まぁ、当たり前だな。ヴィアーチェが私に寄りかかって寝息を立ててるんだし。こんな状態で体内時計が正常に作動するほど私の精神は強固じゃない)
ヴィアーチェ 「……ん……」
工房主 (こんなに密着しているのに寝ちゃうのは、信用されているのか単に無警戒なだけか)
工房主 (……やめとこ。考えるほどに悪い方へ行ってしまいそうだ)
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 (えろ漫画だと、こういう状態からえっちなことに発展するんだろうけどさ……)
工房主 (私にはそんな勇気もなくただ好きな人の寝顔を間近に眠れぬ時間を過ごすだけなのである)
工房主 (と昭和の文人みたいに言ってみる)
工房主 (それにしてもヴィアーチェって温かいな……良い匂いするし……)
工房主 (ぎゅっと抱きしめるくらいはいいかな。起きないかな? いや、起きるよな、普通。でも……)
ヴィアーチェ 「……ダメ……です……」
工房主 「っ!」
工房主 (…………寝言か。びっくりした)
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 (やめとこう。寝込みを襲うみたいで嫌だ。そういうのはヴィアーチェが一番嫌ってるし)
工房主 (鋼鉄の自制心。……じゃなくて単に度胸が無いだけなんだよナ。ヘタレな私)
工房主 (それにしても……)
工房主 「…………ハラ減ったな……」


ヴィアーチェ 「ん……あれ。私、眠って……?」
工房主 「起きた? 大丈夫?」
ヴィアーチェ 「主さん? えっ、あっ、そうか、私……! すみません、寄りかかってしまって……重かったですよね」
工房主 「問題無いよ。それよりお腹すかない? もう十時だよ」
ヴィアーチェ 「もうそんな時間……」
工房主 「どのレーションにする? いっぱい種類があるよ」
ヴィアーチェ 「そうですね……。あ、これ自衛隊のレーションですよ」
工房主 「でかした!」


工房主 「しかし携帯コンロとココアと粉末ミルクまであるとは。火器保管庫は四次元ポケットか」
ヴィアーチェ 「おかげで温かいココアが飲めますね。身体が温まります」
工房主 「不本意だけどアレッサに感謝しておくか」
ヴィアーチェ 「そうですね」
工房主 「…………」
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「……ヴィアーチェ」
ヴィアーチェ 「はい」
工房主 「こんなときになんだけどさ。今言っとかないと間に合わないから」
ヴィアーチェ 「はい」
工房主 「誕生日おめでとう」
ヴィアーチェ 「……ありがとうございます」
工房主 「本当はさ。ちゃんとプレゼントも用意して、ささやかなパーティも予定していたんだ」
ヴィアーチェ 「はい」
工房主 「日曜だからさ、他に誰もいなくて二人だけだけど」
ヴィアーチェ 「…………」
工房主 「ごめんね。せっかくの誕生日がこんなことになって」
ヴィアーチェ 「謝らないでください。主さんが悪いわけではありませんから。それに……」
工房主 「?」
ヴィアーチェ 「私は別に……気にしていません。ちゃんとこうして二人で過ごしてるんですから」
工房主 「遭難状態だけどね」
ヴィアーチェ 「それでも、です。一枚の毛布を二人で使う、今の状態も……悪くないと思っています」
工房主 「……なんだか今日は大胆発言するね」
ヴィアーチェ 「いけませんか?」
工房主 「よくなくはないよ。でもヴィアーチェらしくないなと思って」
ヴィアーチェ 「仕方ありません。『こんな暗い地下室に閉じ込められて、好きな人と二人きりでくっついて毛布にくるまっていて、平静でいられるものですか』」
工房主 「え? なんで英語……じゃなかったな、どこの言葉? なんて言ったの?」
ヴィアーチェ 「私だってこんな状況では疲れてしまって普通ではいられません、と言いました」
工房主 「そう、だよね。早く助けが来るといいんだけど……まだ九時間くらいあるかな」
ヴィアーチェ 「……あと九時間しか……」
工房主 「え?」
ヴィアーチェ 「なんでもありません」


工房主 (ヴィアーチェ? ……眠っちゃったか……)
工房主 (ずっと気を張ってたんだろうな。疲れるのも無理はない)
工房主 (私も寝るか……。ヴィアーチェが隣にいて眠れる気が全然しないけど)
工房主 「……? あれ、なんで急に部屋の明かりが点く……」
 どばたーんっ!
アレッサ 「HAHAHA! かくれんぼは終わりだぜお二人さん!」
ヴィアーチェ 「っ!?」
工房主 「っ!?」
アレッサ 「サバゲから帰って気分よくビールを呷ってて、今日がメイド長の誕生日だと思い出して工房に来てみれば誰もいねェ。しかしあちこち明かりがついてるし鍵が開け放しだから、ハハァ、こいつはもしかして地下室にいるンじゃねェかと思って来てみれば! ビンゴ! そして二人仲良く毛布にくるまってラヴってると来た!」
工房主 「…………」
ヴィアーチェ 「…………」
アレッサ 「お邪魔しました」
工房主 「待てアレッサ! ドアを閉めるな! ノブが壊れてるんだ!」
ヴィアーチェ 「待ってくださいアレッサさん! 内側からは開かないんです! 閉めないで!」
アレッサ 「壊れてる? じゃあ好都合じゃねェか。明日の朝に開けに来てやんよ。だから好きにヤってなよ。『アレ』ならバックパックに入ってたろ?」
ヴィアーチェ 「なっ、何を!? アレッサさん酔ってますね!?」
アレッサ 「ええ、飲んじゃっていい気分ですよ~。ンじゃー、ごゆっくり~」
工房主 「アレッサ! 『工房主命令』だ! ドアから手を離すな!」
アレッサ 「…………ちっ。せっかくのチャンスだってのに何言ってやがんだろうね、ヘタレマスターは……」
工房主 「こういうのはチャンスじゃなくて弱り目につけ込むって言うんだよ。とにかくドアを閉めるなよ?」
アレッサ 「へいへい。工房主命令じゃ逆らえませんて」


工房主 「やれやれ……やっと出られた……」
ヴィアーチェ 「ですね……。じっとしていただけでしたのに、疲れました……」
工房主 「あーもう、日付変わってるし……」
ヴィアーチェ 「あ、やっぱり市子さんからメールが来てる……。さすがに心配をかけてしまってますね」
工房主 「すぐに連絡したほうがいいね。じーさまに飛び火したら私が死ぬ」
ヴィアーチェ 「わかりました」
工房主 「それが済んだら車で送っていくよ。この酔っ払いも自宅に帰さなきゃいけないし」
アレッサ 「うい。あざーっす」


工房主 「アレッサの家を先に回ったから遅くなっちゃったな。ごめん」
ヴィアーチェ 「いえ。送っていただいてありがとうございました」
工房主 「じゃ、お疲れ様」
ヴィアーチェ 「お疲れ様でした、主さん」
工房主 「……と、ちょっと待って。プレゼントを渡すの忘れてた。これ、大したものじゃないけど……」
ヴィアーチェ 「ありがとうございます。嬉しいです」
工房主 「気に入ってくれるといいんだけど。じゃ、また明日」
ヴィアーチェ 「はい。おやすみなさい」


 12/1(月)

アレッサ 「うわああああああああん! あたしの取って置きレーションがああああああ!」
工房主 「あー。お腹すいたんで少し分けてもらったよ」
アレッサ 「なんてことすんだよぅ……限定モノもあったんだぞ……」
工房主 「そりゃすまなかった。けど、閉じ込められたのはアレッサのせいだからね。甘んじて受けてほしい」
アレッサ 「修理代も給料から引かれるし限定版レーション食べられるし二日酔いでアタマん中でゾウの大群がタップダンス踊ってやがるし……こんなのってないよ……酷過ぎるよ……」
ヴィアーチェ 「これに懲りて施設を乱暴に扱わないようにしてください」
アレッサ 「……イエス、マム」


アレッサ 「ところでメイド長、ちょっと相談が」
ヴィアーチェ 「なんでしょう?」
アレッサ 「マスターと一緒の毛布で寝てたってことはみんなに黙ってますから、修理代を経費にしていただくなんてことは可能でしょうかね?」
ヴィアーチェ 「そうですか。一晩地下で過ごさなければいけなくなるところを助けていただいたので半分は経費で負担するつもりでしたが、全額アレッサさんがお支払いくださると」
アレッサ 「すンません調子乗りすぎました! 半額でお願いシャス!」
ヴィアーチェ 「わかっていただければいいんです」
アレッサ 「……あー……当分メシ代を削らないとな……」
ヴィアーチェ 「毎日工房に来てごはんを食べているじゃないですか……どこの食費を削るんですか」
アレッサ 「外食ですよ。飲み会とか」
ヴィアーチェ 「それもほとんどクローディアさんに払わせてますよね……」
アレッサ 「知りませんね、そんなことは。……そう言えばメイド長、髪留め変えたんスね」
ヴィアーチェ 「え? はい、まぁ」
アレッサ 「似合ってますよ。マスター好みな感じで」
ヴィアーチェ 「……そうですか」


メイリン 「なんだか今日、メイド長の機嫌が良いですね」
クローディア 「そうだな。せっかくの誕生日に地下に閉じ込められたと聞いているが、どうしたのか」
メイリン 「何かいいことがあったんでしょうかね……?」



            完




【あとがき】
 なんとなくヴィアーチェとラヴりたかったんで思うがままに書いた。
 後悔はしていない。
 読了ありがとうございました。

 
創作小説 | Comments(0)
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